PMIと規定、業務分掌

 PMIにおいて、規定や業務分掌を確認し、場合によっては新設等の方針を決定実行することは、譲受後の譲渡会社の体制をスムーズに運営するために重要なものです。
 これは新体制での業務上の大きなミスやシステム上の問題等、現場の混乱を招かないための基礎的な整備と言えます。
 具体的には、報告義務を課する規定が必要なための内部規程類等(例えば会社運営に関わる基本的事項に関する規程である定款、組織や業務およびそれらに付随する権限に関する規程では組織図、就業規則や給与などの従業員の業務や待遇などに関わる規程では就業規則、賃金、給与規程、退職金、退職年金規程など)があげられます。また業務分掌は、各部署が行う具体的な仕事を明確にするために定められ、社内で共有している会社もあります。

 中小企業においては、譲渡側・譲受側ともに人員に余裕がない状況で通常業務に加えてPMIの取組を行うこととなります。このような状況下でPMIプロセスを円滑に進めていくには、まず譲受企業の規定や業務分掌の詳細な現状把握(情報収集)を行い、可視化しておくは重要なプロセスとなります。

一般論としての、規定、業務分掌とは?

規定とは?

 規則やルールとは人の従うべきものとして主に文章によって規定されたものをいい、規定とは物事のやり方を一定のきまった形に定めることや、そのきまり等をいいます。           

業務分掌とは?

 業務分掌とは、会社などの組織において部署単位のチームごとに業務内容の範囲や責任を明確化させることです。 曖昧だった各部署やチームごとの業務内容、責任、権限をはっきりと決めることで働きやすくなるケースも見受けられます。これは、個人単位(各役職、担当者など)の職務分掌と違い、部署単位という大きな枠組みで役割や権限が配分されることに違いがあります。

PMIでの、規定、業務分掌とは?

 PMIのフェーズにおける規定や業務分掌の整備目的は、属⼈化等による業務のブラックボックス化を解消し、可視化していくことにあります。

 上場会社等では経費精算や各申請等についても一定のルール決まりがあり、従業員はそのルールに従って各種手続きを行っています。

 一方で中小企業の場合、制度やルールが未整備であることも多いのが現状です。これは柔軟にビジネスを進めていく上で、状況に応じて判断、決定していく方が効率の良い側面があるというのも事実でしょう。このため、中小企業の多くはいわゆるオーナー経営者の頭の中にルールがあり、会社、組織をまとめている事例も多いといえます。

 他方で譲渡企業のオーナーが抜けた後でも、譲受企業のビジネスが通常通りまわることを優先して取り組む必要があるため、規定や業務分掌の整備は重要であるといえます。

PMIでの規定

 PMIのフェーズにおいて、確認、整備していく規程類としては以下のようなものがあげられます。

・基本規程/定款、取締役会規程、監査役会規程

・組織規程/組織規程、業務分掌規程、職務権限規程、稟議規程、関係会社管理規程、内部者情報管理規程

・人事規程/従業員服務規程、給与規程、退職金規程、役員慰労金規程

・業務規程/経理規程、原価計算規程、販売管理規程、購買管理規程、固定資産管理規程、予算管理規程、生産管理規程、外注管理規程、文章管理規程、印章規程、内部監査規程、株式取扱規程

・厚生関係/従業員持株会規程、旅費・出張費規程、慶弔見舞金規程、社宅制度

PMIでの業務分掌

 PMIのフェーズにおいても、各部署ごとのものを確認し、整備作業を進めます。業務分掌の中身のイメージとしては、以下のような内容となります。

 1.株主総会、取締役会、株式、社債等に関する事項

 2.持株会制度に関する事項

 3.社印、社長印等の保管および捺印管理に関する事項

 4.稟議書、申請書等重要文書の処理に関する事項

 5.規程類の作成、配付および改廃ならびに原本管理に関する事項

 6.契約、商業登記、登記事務等に関する事項

 7.不動産の売買、賃貸借契約および更改、解除等に関する事項

 8.無体財産権の売買、賃貸借契約および更改、解除等に関する事項

 9.社内業務合理化の統括的企画および推進に関する事項

 10.社宅・寮、保養所の売買、賃貸借契約および更改、解除等に関する事項

 11.社有ビルの維持管理および警備、保安、防災等に関する事項

 12.損害保険の付帯および更改、解除等に関する事項

 13.本社主催の式典等に関する事項

 14 その他、他部門に属さない業務および特命事項