譲渡企業と譲受企業が各々の経営資源を活用し、グループ全体の成長を目指します。主に事業シナジーについては、(売上拡大につながる)売上シナジーと(売上原価や販管費といったコスト削減につながる)コストシナジがあります。目的に応じ、シナジー効果を追求する範囲や優先順位を決めて取り組みます。
売上シナジー
売上シナジーには経営資源の相互活用によるクロスセルや販売チャネルの拡大、経営資源組合せによる製品・サービスの高付加価値化や新製品・サービスの開発が、挙げられます。
経営資源の相互活用
既存顧客へ、グループ内の製品やサービス等を相互活用してアプローチし、売上拡大を図ります。例えば譲渡企業と譲受企業の製品やサービス等において補完的な関係がある場合、追加的な売上を獲得することで(クロスセルとして)顧客あたりの売上増加効果を得ることが可能です。
また、自社とは異なる業種や業界につながる販売チャネルを持つ企業との統合では、獲得した新たなチャネルを通じ、これまで接点がなかった市場への展開が可能となります。
一方で、これらの取り組みでは闇雲な提案によって顧客の信用を失わないよう留意することが必要となります。
経営資源の組合せ
譲受側と譲渡側が各々の技術やノウハウ等を組み合わせ高付加価値化したり、新製品や新サービスの開発を行うことで売上の拡大を図ります。
顧客にとっての利便性の向上や、潜在的なニーズを取り込んだ開発などが切り口の一つとなります。経営資源における強みを明確化し、綿密なコミュニケーションを取りながら進めていくことが必要となります。
コストシナジー
コストシナジーにおいては売上原価や販管費における、改善または共通化・統廃合といった観点でシナジー効果を追求します。
売上原価
売上原価の改善においては生産現場、サプライヤー、在庫管理について検討してきます。
例えば、生産現場においては5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を導入し、ミスや効率の改善を通じて生産性の向上を図ることができます。具体的には、過剰設備・人員、手待ち時間、無駄な加工・不良品、在庫の保管場所や作業スペースのレイアウト等に、課題、改善ポイントが多く潜んでいる可能性があります。
サプライヤーについては、まず不利な取引条件となっている取引先がないかを確認し必要に応じて改善を図ります。またこれらの安定化を考えて新たな(サプライヤーの)獲得も検討してきます。 他方で安定した調達網を確立するにはサプライヤーとの良好な関係性を気づくことが望ましく、取引改善の交渉を行う際はその他関連する事象にも注意を払い慎重に行うことが必要です。
在庫管理については管理面の不十分さがないか現状把握を行い、ルールを明確にし、運用します。在庫の定義を決めて実地棚卸による帳簿との差異の早期把握、現品管理の徹底を行い、これを管理することで改善を図ります。
共通化、統廃合の観点からは重複する経営資源について検討します。
例えば、共同調達によるボリュームディスカウントによる調達コストの低減や、生産工程や設備、拠点等における合理化、集約が挙げられます。
一方でこれらに伴って、不動産における契約上の違約金や、土壌汚染の有無の確認、サプライチェーンにおける調整や認証、従業員の勤務条件などに留意が必要となり、事前の丁寧な説明や合意、調整が求められます。
販管費
販管費における改善としては、
例えば広告宣伝や販売促進が、目的の費用対効果としての適切な水準にあるかを確認します。 また、間接業務における重複作業や目的が曖昧になっている業務を洗い出し、これを可視化して是正します。
販管費における共通化、統廃合では、
例えば共同配送などを行うことで、物流面での費用低減ができないか検討します。 また譲受企業が譲渡企業の管理機能を代替または補完することで、生産性の向上ができないかを検討します。販売拠点の統廃合なども、業務効率化や拠点化配送の削減につながります。
間接業務面についてはITツール活用が効率化につながる場面もあるため、その有効性をあわせて検討していくことも望まれます。一方で、これらにおいても従業員の異動等が伴う場合は、事前に丁寧な説明を行い、理解や合意を事前にしておくことが望ましいと言えます。